推奨書物

随時追加してゆきます。
様々な書籍が出版される昨今、一切の個人的観点からジャンルを問わず勝手に紹介していきます。

一人暮らしのOLを描きました (2015~)


手描き感とゆるい雰囲気の漂う中で、帰宅後の自宅を舞台としてうっかり気味の一人暮らしのOLの喜怒哀楽を描く。
作中では全くと言っていいほど主人公のOLは言葉を発しないため、状況から読み取る情報が多くなることも世界観に没入することを後押しする。

どうにも今の会社や仕事が好きになれないようで、ひとりでカエルのぬいぐるみを抱き泣いて寝たり、金曜の夜は元気だが日曜の夜に絶望をして朝が来ることを拒んだりと、少なからず似た境遇に深く共感を持てることも魅力である。
辛いのは自分だけではないのだという謎の安心感を与えてくれると同時に、わずかな土日と永遠とも思える平日を繰り返すだけの日々を送る我慢や努力、もしくは逃避が誰のためのものなのか、一生の限られた時間をどう使いどう生きるのかを客観視する機会となる。

万能鑑定士Qの事件簿(2012~)

人の死なないミステリーとして高い完成度を誇る完結型の小説。
鑑定士として日頃仕入れる古今東西の商品知識と洞察力を武器にあらゆる難題に挑む。

ハードボイルド小説のように滅多に目にすることのない難解な表現はなく、的確かつ流れるように読みやすい描写は状況を正確に想像させてくれる。

既存にないコンセプトだけでなく読みやすさの点でも文章構成の技術の高さが垣間見え、ミステリーや推理小説の概念を払拭した新境地であるように感じる。

ミステリー小説の多くは行く先々で、下手をすれば冒頭からすでに誰かが殺害されていたりすることが様式美と化しているが、本作では誰も死なないかわりに国内全土を巻き込む犯罪や莫大な額の案件を取り扱う。

人が死ぬことを動機とせずとも、現実に起こりうる事件規模や各々の知識と技術を満遍なく発揮する登場人物の魅力は作中の世界観に没入するには充分である。

基本的には一つの事件は巻ごとに解決されるが、本当に完結するのかと不安にすらさせるほど巻末まで引っ張り、残り僅か数ページで点と点を全て線で繋ぐまとめ方は最早芸術の域である。

全巻を通して主人公の周りで事件を追う過程で色恋模様が展開されるが、それらに関しては事件解決の鮮やかさとは全く無縁であることも読み手をニヤニヤさせる要因となる。
読み終わると頭が良くなったような気がするが、気のせいである。

ゴーストスイーパー美神 極楽大作戦!!(1991~)

霊や妖怪、怨恨、生死といった重いテーマを扱うがシリアスかつ笑と涙が共存する、ギャグの要素を全般に取り入れつつも強いメッセージ性を持った作品。

主人公がひたすら強くなり続けたり覚醒するありがちなものではなく、才覚に秀でた主人公の能力にもその時々の限界があり、それを上回ることなく状況に応じて霊具で補う応用力が現実味を帯びており、より戦闘に際しての緊張感を増長させる。

話の展開やテンポが非常に良く、1冊の内容や密度の濃さは類を見ない。世代を問わずに楽しめる不朽の名作である。

アフロサムライ(2009~)


荒廃しつつも科学が進歩した世界において、かつて父が額に巻いていた最強を示す「一番」のハチマキを取り戻すためアフロのサムライが奮闘する。

終始追手との戦や復讐の道中を描くが、一番のハチマキ奪還後もアフロサムライの生きる方向性は変わらずストーリー自体にも大きな変動はないため、純粋に唯一無二の雰囲気や映像を楽しむことに向いている。
終始旅を共にするサングラスの相方は、寡黙なアフロサムライとは裏腹に饒舌かつ黒人系のハスキーがかった非常に魅力的な繊細かつ太い声をしており、サイバーと荒廃が共存し歴史観が詰まった独特な雰囲気を彩っている。

レッドライン(2009)


様々な異星人が共存する近未来を舞台に、莫大な規模の賭博が行われている無秩序なモーターレースをアメコミ調で描く日本映画。

マシンの速度や走行中の描写が非常にダイナミックであり、レースを目の前で見ているような臨場感と速度を体感することができる。重火器やホバー等様々なギミックを搭載したマシンが集う中、「とにかく優しい男 J.P」は銃器を積まない古いクラシックな型の愛車で出場し、
敵から狙われ賭博のいざこざに巻き込まれ大穴と言われ蔑まれるもそれらを意に介することなく優勝を狙う。
夏の青く高い空に雲がゆっくりと流れるようなけだるげな日常風景と、レース時の高揚感と疾走感のギャップが見事な作品。とにかく優しい男J.Pの声はキムタクであり、アイドルや芸能人を声優に起用することには都度の賛否があるが、本作においてはハマリ役である。

戦争めし(2015~)

戦時中の様々な環境での食事にまつわるエピソードを短編形式で描く。
こんなうまいもの、もう二度と食えないかもしれない。
生きて帰ったらもう一度これを食べたい。
悲惨極まりない戦時下においてもその中で工夫して考え出した食事を取ることで一時の幸せと充足感を得る様子やその周辺の人間模様には、時代は違えど今と変わらぬものが垣間見える。

美味しいものを食べる幸せは今も昔も大差ないように思えるが、作中の時代考証である戦時下にはそのたった一度の食事がいかに貴重か言葉には多く語られず、たったの一言や一瞬がそれを代弁する。

扱うテーマの重さと似つかわしくないゆるめで親しみやすい絵柄とのギャップが見事に合致しており、戦時下の日常で見つける小さな幸せとその崩壊までも辛辣に表現している。

食べ物への価値観が崩壊し食品廃棄率が世界最高の日本において、年齢を問わず読まれるべき作品である。
物に溢れ裕福に思える現代は突発的なものではなく、悲惨な過去の上に成り立ち続いているものであることを再認識させてくれる。

同じ食べ物に対していかに価値観が違うか、同じ一口でもどれほどの幸福か。どんな歴史の本より忠実に当時の状況を知る事ができる作品である。

本橋兄弟(2016~)

 高校生兄弟2人で暮らす日常風景と、それを取り巻く人々の関わりを描く。全体的に男性はかなり良いガタイに描かれる傾向があるがそれはそれで素晴らしい持ち味となっている。

家、学校、バイト先の喫茶店と非常に狭い世界観で展開ではあるが、その分見過ごしがちな普段当たり前となっている幸せや些細な事での人の優しさを垣間見る。ケンカや曲解による仲違いなどのドロドロとしたものはなく極めて平和的に日々が進んでいく。

一般的には良くも悪くも捉えられる事でも、自分と他人が違うことを教わらずして理解し、その違いをそれぞれが受け入れ肯定する様はまさに仲間や友人と呼ぶにふさわしく、友人や他人との遠くも近くもある理想的な関係性を教えてくれる。
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